ドイツ付加価値税法と消費税法
第十話 旅行サービスに関する特別規定など
付録 ドイツ付加価値税法翻訳 石川 紀(2024/11/05)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第一話 電子インボイスの義務化について 石川 紀(2024/11/05)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第二話 輸出免税と免税店 石川 紀(2024/11/28)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第三話 プラットフォーム課税 石川 紀(2024/12/27)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第四話 リバース・チャージ――EU型付加価値税はいつまでEU型であり続けることができるのだろうか 石川 紀(2025/01/21)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第五話 小規模事業者を巡る問題 石川 紀(2025/02/18)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第六話 内外判定と輸入消費税 石川 紀(2025/03/26)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第七話 納税義務の拡大――責任の規定と前段階税額控除の否認規定 石川 紀(2025/04/23)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第八話 課税手続 石川 紀(2025/06/25)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第九話 軽減税率、非課税、ゼロ税率 石川 紀(2025/08/06)
ドイツ付加価値税法と消費税法――第十話 旅行サービスに関する特別規定など 石川 紀(2025/09/26)
ドイツ付加価値税法と消費税法――補遺 段階的なインボイス電子化義務、時限的付加価値税減税など 石川 紀(2025/11/11)
はじめに
これまでドイツ付加価値税法と我が国の消費税法の比較考察を行ってきたが、今回が基本的に最終回となる予定である。
これまでまとまったテーマとして書くことができなかったいくつかの点について述べていきたい。ドイツ付加価値税法の翻訳としては、本文に関する翻訳は今回の翻訳をもって終了する。残された論点として、最近我が国でも判例等で問題となっているインバウンド観光に関する旅行サービスの扱いと、今後我が国でも問題となってくると思われる付加価値税の税務代理人について述べることとしたい。[1]
経過規定および残された附属書等に関しては次回、補遺として2025年度税制改正により改正された規定と併せて紹介し、ドイツの付加価値税法の全訳を完了することとしたい。
1 旅行サービスに関する特別規定
欧州はインバウンドという意味でも、アウトバウンドという意味でも観光大国である。フランスは昨年オリンピックも開催されたということもあり、インバウンドの観光客が1億人を超えた。インバウンドの観光客のフランスにもたらす収入も740億ユーロ(12.8兆円)に達していると報じられている。[2]
EU域内では他にもスペイン、イタリアという観光大国もある。これは欧州における旅行サービスにかかる付加価値税の扱いが各国間で深刻な問題となるということを意味している。第六次付加価値税指令は我が国の消費税のモデルとなった法律であるが、この指令は国境を越えた役務の提供については役務を提供する事業者の所在地が課税国となることを原則としていた。[3]
この原則を単純に旅行サービスに当てはめることとなれば、たとえばパック旅行を提供する事業者がドイツにあれば、フランスに旅行に行く場合であっても、パック旅行に関する付加価値税収入は全てドイツに帰属することとなり、税収を巡り独仏で紛争が生じかねないこととなる。第六次付加価値税指令の後、欧州の付加価値税は消費地において課税するという制度を採用するが、パック旅行のようなサービスの場合、どこが消費地なのかについて、各国間で紛争が生じる可能性がある。
そのために、欧州付加価値税指令は第六次指令以降、旅行に関する特例規定を置いており、ドイツ付加価値税法では下記のように規定されている。
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亜細亜大学経済学部 特任教授
1983年東京大学法学部卒業。旧大蔵省に入省。ドイツ税制の調査に従事。独フライブルク大学留学。1989年の消費税導入時に白河税務署長を勤める。1992年から独フランクフルト総領事館にて、ドイツの財政・金融政策を担当。平成の金融危機時には金融機関の破綻処理、不良債権処理に従事し、その間、海外の破綻処理法制についての論考も執筆。2006年~2008年国税庁徴収課長を勤めた後、2010年から在ベルリン日本大使館公使としてドイツの財政・金融政策を担当。帰国後は、名古屋税関長、関信国税不服審判所長、神戸税関長等を勤めた。2019年に財務省退官。2025年4月から亜細亜大学経済学部で教鞭をとる。